ワンマン社長
40代半ばで独立起業をして以来15年間
社員のみならず 業界の主だった御仁をも
唸らせる その手腕は 文字通りワンマン
経営にありながらも 社員やその家族まで
を思いやる一面もあって
ある種のカリスマ性として 周囲も納得す
るところでした
若い社員たちは 大いに影口をたたきなが
らも いざとなれば このワンマン社長を
頼ってもいました
叱られた勢いで辞めて 数年後に
戻りたいと言ってきた元社員を それこそ
二つ返事で引き受けるなど 普通はないこ
とです
癇癪もちで 何かあれば大声で怒鳴り散ら
す
この我儘社長に不平不満はあっても
自分が この会社に留まる限りは
ずっと この社長の下にあると
思うことで 社員らは ある種の安定を
得ていたことも確かです
たとえ会社が潰れる事態となっても
この社長だけは
最後まで社長として威張っているであろう
と 誰もが疑うことはなかったのですが
ある日
突然
会社が売られました
先崎愛海