先崎愛海のブログ

もうキレました。

沈黙

 

会長室のキャビネットに見つけた「調査書」ですが

題字に間違いはなく

やはり 現社長の身辺調査の報告書でした。

 

A4コピー用紙にワープロ書10頁程度の薄っぺらい報告書

ですが

読み進めるのにも 背信の自覚から 息苦しさは増すばかり

これほどの思いをして覗き見た報告書でしたが

 

そこに書いてあったことは「調査」と断るほどの内容はなく

現社長と同居家族について わずか3日間ほどの動向調査を

示していました。

クリアファイルに挟んであったスナップ写真は、現社長の

奥さんと成人した娘さんたち、それぞれ、自宅からの外出時

か帰宅の様子を写したものと分かりました。

 

会長が現社長や、その家族の素行調査を依頼した「動機」で

すが、

「報告書」に由れば、

現社長の「背任横領」を裏付ける証拠探しにあった、ようで

す。

但し、件の報告書は、

「以上の調査結果から、調査対象者においては、特段の異変

はなく、特定の人物らとの接触は認められなかった。」

と結論していました。

 

読み終えた書類を、元の位置に戻してから暫く、

その場にへたり込んで考えました。

 

やはり、

私が報告書を見つけたのは偶然にはなく、

現社長が「調査対象」にある事実を知るように

会長が仕向けたものと 理解しました。

もっとも、私のような契約社員上がりが、

仮に現社長の不正の何かを知ったところで、

何の役に立つはずもなく

となれば、

詰まるところ

会長が真の目的としたことは

 私が読み知った報告書のあれこれを

然るべくところへ密告、或いは告発しろ、

と言ったところだったのでしょう。

告発とまで謂わずとも、

社内や取引先に話して広めるくらいのことは

期待したはずです。

確かに、当時の社長に、実質的な不正行為が

あったことは事実です。

 

但し、

会長の意に反し、

このときの私は、

その調査報告書については、一言も

誰にも話すことはしませんでした。

 

自分で言うのもなんですが、

私は根はミーハーなお喋りです。

バカみたいに正義感を振りかざし、不正をする

相手を徹底して糾弾することもあります。

 

それでも、不正を正面から斬らずに、

裏工作に近い策略を知りながら、

それに手を貸すことはできませんでした。

 

ただ、

私の代わりとなる密使は他にいたようです。

 

調査報告書を見つけたときから

ちょうど二か月後に国税が入る大騒動に

続き、

ある朝、一切の説明なく、突然の社長交代と

一人の幹部社員が消えました。

 

 

 

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ほんとうの正義って? 

 

先崎愛海